独断と偏見の書籍評
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朽ちていった命 ー被爆治療83日間の記録ー
2012.03.19 *Mon
「朽ちていった命 ー被爆治療83日間の記録ー
NHK「東海村臨界事故」取材班
<あらすじ>
1999年9月に起きた茨城県東海村での臨界事故。核燃料の加工作業中に大量の放射線を浴びた患者を救うべく、83日間にわたる壮絶な闘いがはじまった-。「生命の設計図」である染色体が砕け散り、再生をやめ次第に朽ちていく体。前例なき治療を続ける医療スタッフの苦悩。人知及ばぬ放射線の恐ろしさを改めて問う渾身のドキュメント。
<感想>
昨年(2011年3月)に東北大震災が起こり、福島原発を地震と津波が襲う未曾有の天災が起きた。あの日、阪神大震災を経験している私は地震への恐怖が甦ったが、それにも増して津波の映像を見たとき、言葉を失った。
福島原発は、あの津波にのみ込まれたのだ。水素爆発、メルトダウン・・・種々の非常事態を起こし、地震発生1年後の現在でも半径20キロ以内は立ち入り禁止区域のままだ。それはつまり、放射線被曝の危険が続いていると言うこと。
どれだけの人が、原発事故、核燃料について正しい知識を持っているのだろう?このことに少しでも正面から考えてみようとするのなら、本書は意味がある1冊だと思う。
医療関係者である私は、現在の仕事内容が放射線に関わる仕事である。けれど、放射線に関する知識はほとんどない。私のような薄い知識で原発に関わっている作業員は多いはず。本当に怖いことだと本書を読むとわかる。
生きている身体は再生能力を持っているが、大量の中性子線被爆により、DNAがズタズタに破壊されてしまった身体は再生能力を失い、まさに朽ち始める。本書の中に被爆直後の腕と、しばらく経ってからの腕の写真が掲載されているが、その腕のあまりの変化に身震いが起こりそうだった。
中性子線被爆の怖さ。ストロンチウム、セシウムで被爆することの恐ろしさが少しではあるが理解できるようになる。
人間が完全にコントロールしきれないもの。それが「核燃料」なのだと改めて思った。
これはNHKが取材したもののまとめらしい。もっと多くのメディアが過去の原発事故や、放射能被爆について語るべきだと思う。
1999年にこれだけの事故が起きていたのに、ナゼ私の記憶には(そんな事故あったな)ぐらいしかないのだろう。そのことが問題でもあると思った。
NHK「東海村臨界事故」取材班
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1999年9月に起きた茨城県東海村での臨界事故。核燃料の加工作業中に大量の放射線を浴びた患者を救うべく、83日間にわたる壮絶な闘いがはじまった-。「生命の設計図」である染色体が砕け散り、再生をやめ次第に朽ちていく体。前例なき治療を続ける医療スタッフの苦悩。人知及ばぬ放射線の恐ろしさを改めて問う渾身のドキュメント。
<感想>
昨年(2011年3月)に東北大震災が起こり、福島原発を地震と津波が襲う未曾有の天災が起きた。あの日、阪神大震災を経験している私は地震への恐怖が甦ったが、それにも増して津波の映像を見たとき、言葉を失った。
福島原発は、あの津波にのみ込まれたのだ。水素爆発、メルトダウン・・・種々の非常事態を起こし、地震発生1年後の現在でも半径20キロ以内は立ち入り禁止区域のままだ。それはつまり、放射線被曝の危険が続いていると言うこと。
どれだけの人が、原発事故、核燃料について正しい知識を持っているのだろう?このことに少しでも正面から考えてみようとするのなら、本書は意味がある1冊だと思う。
医療関係者である私は、現在の仕事内容が放射線に関わる仕事である。けれど、放射線に関する知識はほとんどない。私のような薄い知識で原発に関わっている作業員は多いはず。本当に怖いことだと本書を読むとわかる。
生きている身体は再生能力を持っているが、大量の中性子線被爆により、DNAがズタズタに破壊されてしまった身体は再生能力を失い、まさに朽ち始める。本書の中に被爆直後の腕と、しばらく経ってからの腕の写真が掲載されているが、その腕のあまりの変化に身震いが起こりそうだった。
中性子線被爆の怖さ。ストロンチウム、セシウムで被爆することの恐ろしさが少しではあるが理解できるようになる。
人間が完全にコントロールしきれないもの。それが「核燃料」なのだと改めて思った。
これはNHKが取材したもののまとめらしい。もっと多くのメディアが過去の原発事故や、放射能被爆について語るべきだと思う。
1999年にこれだけの事故が起きていたのに、ナゼ私の記憶には(そんな事故あったな)ぐらいしかないのだろう。そのことが問題でもあると思った。
CATEGORY : e.t.c・・・
アントキノイノチ さだまさし 著
2011.12.09 *Fri
「アントキノイノチ」 さだまさし 著
<あらすじ>
杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。遺品整理会社の見習いとなった彼の心は、凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同じ年のゆきちゃんと過ごすことでほぐれてゆく。けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り・・。「命」の意味を問う感動長編。
<感想>
映画化され、岡田将生と榮倉奈々主演で話題の小説を読みました。読む予定はなかったのだけど、貸してもらったので。こうして出会う本も縁やと思います。予想に反していい小説で、読みやすかったです。
小説を読みながら、イメージで主人公:永島杏平は岡田将生だったし、ゆきちゃんと呼ばれている居酒屋バイトの女の子は榮倉奈々を想像していました。杏平役に岡田くんはピッタリだと思います。
小説の中に流れるのは、優しくて温かなものです。私は左相さんが好きです。たぶん心の痛手を負ったことのあるだろう左相さん。だからとても温かで、大きくてそして遺品整理業のプロとしての生き様に心を動かされました。
今年の3月に義父を亡くしました。そのとき、映画化されたことで知った「納棺師」に父の身支度をしていただきました。あの厳かで尊い時間を思い出しました。ひとの命はどれでもすべてが尊いです。その人の人生の最後の整理を行うクーパーズの仕事は、現代には必要な仕事だと思います。そしてその仕事につく方にはぜひこの小説のような方々であって欲しいと思います。
杏平、そしてゆきちゃんと関わりを持つ高校時代の「松井くん」。私の人生の中にも、このようなヤツがいた記憶があります。イヤなヤツだけどそう言うヤツは生き上手なんですよね。許せないし生きている価値などないと思うけれど、じゃぁ殺害しても良いのか?と言う点にも小説は触れています。人間は人と関係を持って生きてるワケで、逃げたくて、切りたくても縁の切れない人がいるもんです。遺品整理専門サービス業を通して、ひとの人生を考え、自分の生き方を見つめ直すコトができたように思います。
本の解説を映画監督の瀬々敬久氏が書いています。クーパーズのモデルになった会社は実際に東京に存在するようで、同じような方々が遺品整理のお仕事をされているそうです。いないのは杏平とゆきちゃん、そして皆が良くいく居酒屋さんぐらいだそうです。
実際にあったコトを小説にしたんだと知りました。
映画の公式サイトで調べてみたら、左相さん役を原田泰造が演じたようです。少しイメージと違ったけど、映画も観たくなる小説でした。
ぜひ中高生にも読んでもらいたいですね。読みやすいですし映画化もされていることで入りやすいと思うので。そして「命」について、生きることについて考えてもらいたいと思いました。
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杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。遺品整理会社の見習いとなった彼の心は、凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同じ年のゆきちゃんと過ごすことでほぐれてゆく。けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り・・。「命」の意味を問う感動長編。
<感想>
映画化され、岡田将生と榮倉奈々主演で話題の小説を読みました。読む予定はなかったのだけど、貸してもらったので。こうして出会う本も縁やと思います。予想に反していい小説で、読みやすかったです。
小説を読みながら、イメージで主人公:永島杏平は岡田将生だったし、ゆきちゃんと呼ばれている居酒屋バイトの女の子は榮倉奈々を想像していました。杏平役に岡田くんはピッタリだと思います。
小説の中に流れるのは、優しくて温かなものです。私は左相さんが好きです。たぶん心の痛手を負ったことのあるだろう左相さん。だからとても温かで、大きくてそして遺品整理業のプロとしての生き様に心を動かされました。
今年の3月に義父を亡くしました。そのとき、映画化されたことで知った「納棺師」に父の身支度をしていただきました。あの厳かで尊い時間を思い出しました。ひとの命はどれでもすべてが尊いです。その人の人生の最後の整理を行うクーパーズの仕事は、現代には必要な仕事だと思います。そしてその仕事につく方にはぜひこの小説のような方々であって欲しいと思います。
杏平、そしてゆきちゃんと関わりを持つ高校時代の「松井くん」。私の人生の中にも、このようなヤツがいた記憶があります。イヤなヤツだけどそう言うヤツは生き上手なんですよね。許せないし生きている価値などないと思うけれど、じゃぁ殺害しても良いのか?と言う点にも小説は触れています。人間は人と関係を持って生きてるワケで、逃げたくて、切りたくても縁の切れない人がいるもんです。遺品整理専門サービス業を通して、ひとの人生を考え、自分の生き方を見つめ直すコトができたように思います。
本の解説を映画監督の瀬々敬久氏が書いています。クーパーズのモデルになった会社は実際に東京に存在するようで、同じような方々が遺品整理のお仕事をされているそうです。いないのは杏平とゆきちゃん、そして皆が良くいく居酒屋さんぐらいだそうです。
実際にあったコトを小説にしたんだと知りました。
映画の公式サイトで調べてみたら、左相さん役を原田泰造が演じたようです。少しイメージと違ったけど、映画も観たくなる小説でした。
ぜひ中高生にも読んでもらいたいですね。読みやすいですし映画化もされていることで入りやすいと思うので。そして「命」について、生きることについて考えてもらいたいと思いました。
CATEGORY : さだまさし
「日々是作文」 山本文緒 著
2011.10.26 *Wed
「日々是作文」 山本文緒 著
<あらすじ>
31歳の私に、10年後の私をこっそり教えてあげたい-。離婚して仕事もお金もなかった31歳から、直木賞受賞&再婚してしまった41歳まで。絶品の恋愛小説で読者の心を揺さぶり、出口の見つからない切さなさを描いてきた著者も、日々様々な思いに揺れながら「微妙なお年頃」を過ごしてきた。激動の10年間を綴ったエッセイ集。
<感想>
山本文緒さんが好きだ。出会ったのは30歳すぎぐらいか?最初に読んだのは「眠れるラプンツェル」だった。読んだ当時、主人公の汐美の置かれた状況や心境が、その当時の自分の抱える閉塞感とシンクロしてしまって貪るように一気読みしたことを覚えている。その一冊で山本氏のファンになった私は、彼女の出版した本はライトノベル(少女向き小説)を除いてほぼ完読した。小説でもエッセイでも、彼女が数行に書く文章が、自分が文章にできなかった心の奥の気持ちを表現してくれることが多くて惹かれる。このエッセイも(そうそう、そうなんだよね)とか(わかるわー)と共感できることも多かった。モチロン違う部分も多くあるけれど、そんな文章に出会った時は、(へぇーなるほどねぇ)と友だちの話を聞くような感覚で読んでしまう。
私よりも3歳上(だと思う)。同じ時代を生きた同世代の女性としも魅力を感じている。
あまりエッセイを好んでは読まない方なのだけれど、山本文緒さんのは読んでしまう。それはまるでお酒を飲みながら、山本さんの思ってることや考えてること、不満や不安を聴くような感覚に似ているから好きなんだと思う。
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<あらすじ>
31歳の私に、10年後の私をこっそり教えてあげたい-。離婚して仕事もお金もなかった31歳から、直木賞受賞&再婚してしまった41歳まで。絶品の恋愛小説で読者の心を揺さぶり、出口の見つからない切さなさを描いてきた著者も、日々様々な思いに揺れながら「微妙なお年頃」を過ごしてきた。激動の10年間を綴ったエッセイ集。
<感想>
山本文緒さんが好きだ。出会ったのは30歳すぎぐらいか?最初に読んだのは「眠れるラプンツェル」だった。読んだ当時、主人公の汐美の置かれた状況や心境が、その当時の自分の抱える閉塞感とシンクロしてしまって貪るように一気読みしたことを覚えている。その一冊で山本氏のファンになった私は、彼女の出版した本はライトノベル(少女向き小説)を除いてほぼ完読した。小説でもエッセイでも、彼女が数行に書く文章が、自分が文章にできなかった心の奥の気持ちを表現してくれることが多くて惹かれる。このエッセイも(そうそう、そうなんだよね)とか(わかるわー)と共感できることも多かった。モチロン違う部分も多くあるけれど、そんな文章に出会った時は、(へぇーなるほどねぇ)と友だちの話を聞くような感覚で読んでしまう。
私よりも3歳上(だと思う)。同じ時代を生きた同世代の女性としも魅力を感じている。
あまりエッセイを好んでは読まない方なのだけれど、山本文緒さんのは読んでしまう。それはまるでお酒を飲みながら、山本さんの思ってることや考えてること、不満や不安を聴くような感覚に似ているから好きなんだと思う。
CATEGORY : 山本文緒
「九月が永遠に続けば」沼田まほかる 著
2011.10.13 *Thu
「九月が永遠に続けば」 沼田まほかる 著
<あらすじ>
高校生のひとり息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必至に探すうちに見え隠れしてきた雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに出口はあるのか-。人の心の奥底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。
<感想>
沼田まほかる氏の作品はこれで3冊目。
アタマから最後までずっと、黒くて重い雲で覆われている、閉塞感ばかりの作品でした。
私にとっては、共感や理解などを超えてるホラーサンスペンスなので小説の内容について感想を書くのは非常にむずかしいです。だって、ひとり息子の文彦が、10代の青年らしい一途な感情で純真無垢に亜沙美を愛していることを母親の佐知子が達観したように受け入れていたこと自体理解できませんから。結局、「亜沙美」と言う女性が、男にとっては魔性の女で彼女に捕らえられたらあらがえなくなるほどの魅力を持っていること。それは女性の目から見てもそうであることがすべてなのかと思います。
余談ですが、子どもが小さかった時、ちょっとした買い物にサイフだけ持ってコンビニに行ったりするとき、ふっと(このままココから失踪したらどうなるんだろ?)などと考えたことがあります。私には(失踪願望)があるんですね。この話を数人の友だちにしたら「わからん」と言われたことがあるので、誰でも持つ感情ではないみたいですけど。
「失踪」が題材になっている小説にナゼか惹かれるのはこのせいかも知れません。
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高校生のひとり息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必至に探すうちに見え隠れしてきた雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに出口はあるのか-。人の心の奥底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。
<感想>
沼田まほかる氏の作品はこれで3冊目。
アタマから最後までずっと、黒くて重い雲で覆われている、閉塞感ばかりの作品でした。
私にとっては、共感や理解などを超えてるホラーサンスペンスなので小説の内容について感想を書くのは非常にむずかしいです。だって、ひとり息子の文彦が、10代の青年らしい一途な感情で純真無垢に亜沙美を愛していることを母親の佐知子が達観したように受け入れていたこと自体理解できませんから。結局、「亜沙美」と言う女性が、男にとっては魔性の女で彼女に捕らえられたらあらがえなくなるほどの魅力を持っていること。それは女性の目から見てもそうであることがすべてなのかと思います。
余談ですが、子どもが小さかった時、ちょっとした買い物にサイフだけ持ってコンビニに行ったりするとき、ふっと(このままココから失踪したらどうなるんだろ?)などと考えたことがあります。私には(失踪願望)があるんですね。この話を数人の友だちにしたら「わからん」と言われたことがあるので、誰でも持つ感情ではないみたいですけど。
「失踪」が題材になっている小説にナゼか惹かれるのはこのせいかも知れません。
CATEGORY : 沼田まほかる
「二度と食べたくないあまいもの」 井上荒野 著
2011.08.10 *Wed
「もう二度と食べたくないあいもの」 井上荒野 著
<あらすじ>
気がつかないふりをしていた。もう愛していないこと。もう愛されていないこと。
直木賞作家が美しくも儚い恋の終わりを描いた傑作。
<感想>
井上荒野さん、好き。本書は恋の終わりを書いた短編集です。
「幽霊」「手紙」「奥さん」「自伝」「犬」「金」「朗読会」「オークション」「裸婦」「古本」の10編。
今回は特別好きな短編はなかったのだけど、あえて選ぶなら「手紙」です。ごくフツウの女子大生:千穂。彼氏はジャズ研で知り合い付き合うことになった1歳上の拓朗。上手くいってるはずだったふたりの関係が最近ぎくしゃくしているような気がしていた千穂だが、気づかないようにしていた。でもそのカンは的中する。恋の終わりの予感から終わるまでをピュアに描いた作品でした。甘酸っぱい感情を味わいました。
他に「自伝」も良かったです。何も始まっていないけれど終わってしまった恋心を上手く表現されていると思いました。
「犬」もなかなか良かったかな。
全部が恋の終わりを描いています。柔らかく、ふわっとした、それでいて痛くて切ないこの感じは井上荒野さんの世界観だと思いました。
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気がつかないふりをしていた。もう愛していないこと。もう愛されていないこと。
直木賞作家が美しくも儚い恋の終わりを描いた傑作。
<感想>
井上荒野さん、好き。本書は恋の終わりを書いた短編集です。
「幽霊」「手紙」「奥さん」「自伝」「犬」「金」「朗読会」「オークション」「裸婦」「古本」の10編。
今回は特別好きな短編はなかったのだけど、あえて選ぶなら「手紙」です。ごくフツウの女子大生:千穂。彼氏はジャズ研で知り合い付き合うことになった1歳上の拓朗。上手くいってるはずだったふたりの関係が最近ぎくしゃくしているような気がしていた千穂だが、気づかないようにしていた。でもそのカンは的中する。恋の終わりの予感から終わるまでをピュアに描いた作品でした。甘酸っぱい感情を味わいました。
他に「自伝」も良かったです。何も始まっていないけれど終わってしまった恋心を上手く表現されていると思いました。
「犬」もなかなか良かったかな。
全部が恋の終わりを描いています。柔らかく、ふわっとした、それでいて痛くて切ないこの感じは井上荒野さんの世界観だと思いました。
CATEGORY : 井上荒野







